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「世界が認めた超一流
コンシェルジュの仕事の流儀」
阿部 佳氏(
グランドハイアット東京
コンシェルジュ)
※『
致知』2015年9月号
特集「百術は一誠に如かず」より
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中でも印象的だったのは共感することの大事さです。
例えば、「落とし物をした」と言われた時、
普通はとにかくすぐそれを解決しようとするわけですよ。
「何を落としたの」
「いつまで持ってたの」って。
もちろんそれは必要なんですけど、
まず寄り添ってあげないとお客様と繋がらない。
気持ちが合わさっていかない。
まず「不安ですよね」って共感する。
それをしないと、解決の仕方って本当は見つからないんですよ。
形としてはカウンターを隔てて対面しているんですけど、
向かい合うものではなく、
寄り添っていかにお客様を安心させるか、
気持ちを楽にさせるかということが大事なんだと気づきました。
――相手の立場に立つ、と。
あくまでも相手の気持ちですね。
相手の立場に立って考えているうちは自分なんですよ。
そうじゃなくて相手の気持ちになる。
これは難しいですけど、お客様はどうしてほしいか、
この人の気持ちとしては何を求めているんだろうという、
言葉の奥にある真意を掴むことを軸に考えていくんです。
――そうやってゼロから仕事を確立されていったわけですね。
そうですね。当時はとにかく出てくる質問、
すべてが初めてでしたし、
私たちのところに来られるお客様はほとんどが外国人ですから、
面白いことを言う人たちもいっぱいいました。
「鷹狩りを見たい」とか
「僕は庭石を売っているんだけど、
どこへ行ったらいい」とか。
もっと強烈だったのは
「昔の私の知り合いを捜してくれ」
とか
「僕の家のリビングにかかってる絵と同じ作者の絵を買いたい」
とかね(笑)。
いまと違ってインターネットのない時代ですから、
電話を駆使して知っている人に
お話を聞いて、聞いて、聞いて、
この人と思えば会いに行く。
そうやって一つひとつの依頼に応えていきました。